このシリーズの他の話 [1話] [2話] [3話] [大長編] [4話]
たぬえもん 4話
今乃滝
―――まえがき~これから始まる短くも長い物語へ~―――
野田優・今回も超支離滅裂ストーリー、たぬえもん4話やってきました!
今乃滝・頑張りました!
この作品は現実のかけらの一つもないサイエンス・フィクションです。
注・某超大作とも関係ありません。たぶん。
~☆~☆~このシリーズに登場する登場人物紹介~☆~☆~
たぬえもん:自称『未来から来たたぬき型ロボット』。のびよしとは、友達(だち)の仲。
のびよし:本名『伸び杉田のびよし』。静子の元カレで、たぬえもんと植木鉢のサボテンが友達。
ジャイパ:ジャイアントパンダ。家業として商店街にある魚屋を営んでいる。
スネ臓:家が[グロいので削除]の形をしている。また、大長編でも出演したがセリフは"0"だった。
出来杉て:本名『出来杉て困る』。お父さんが年収100兆円の大金持ち、宇宙銀行のお偉いさん。
静子:本名『平静子』。特に何も書く事はないが、出来すぎてとは恋人の関係。
お母さん:のびよしのお母さん。本名『伸び杉田う一種マグカップ』。
お父さん:のびよしのお父さん。30回連続で海外出張をした経験があり、今も木星へ出張中。旧名『TKD(東海道)孝志』。
~☆~☆~ ~☆~☆~
その日は空が青く澄み渡っていた。
四月の空。まだ冷たさの残る風に乗って春はようやく訪れようとしていた。
澄んだ空気、夏本番に向かってさんさんと輝く太陽!今日は春休み。だれも昼寝を止めようとしない…。
しかし、こういうのんびりした日はずっと続かない。事件は起きた。
「のびよし~のびよし~いないの~?出かけたの~?」
(ん…なんだ?昼寝中なのに…)
「まいいけど、昼寝しているんでしょうね…のびよし~引っ越しするから準備しなさいよ!!!」
(なんだって?引っ越し?引っ越し!)
たぬえもんもお母さんの声に耐えかねたのか押し入れから出てきた。
「なんだかお母さんがなんかうるさいな。春休み中だってんのに…」
「あっ、たぬえもん!聞いた?!引っ越しをするんだって!」
「ふうん、そうなんだ。…でっ?」
「でっ、て冷たいな…引っ越しをするんだよ、驚かないの?」
「ひ、引っ越し?!」
「(…話、聞いてなかったのか)たぬえもん、なんか準備する事でもあるの?」
「そりゃあるさ。友達のポンくんにお別れを言って、さつま揚げを揚げなくちゃ…いや上げなくちゃ…」
お母さんは2階で物音が聞こえたのかのびよしたちの部屋に向かって大声を上げた。
「やっと起きたのね、はやく用意しなさい!」
「はーい!!!」
その後、のびよしたちは渋々(だけど心の隅でわくわくしながら)引っ越しの用意をした。
そしてそして、たぬえもんは友達のポン君にさつま揚げを揚げていた(…?)。
「…たぬえもん、その雑誌の束、違う雑誌の山なに?」
「そっちこそ。のびよしのバッグも雑誌でいっぱいだけど」
「え?週刊少女雑誌『ハロー!』vol.350~vol.702までのバックナンバーだけど」
「俺は週刊少女雑誌『ハロー!』別冊『別ハロ』のvol.1~vol.471までのバックナンバー」
…きっとそれぞれに思い出があるんだろう…多分。
のびよしは一通り友達の家を回ると家に戻った。
(おっ早かったなのびよし、やっぱ友達少ないんだな10分しか経ってない)
「たぬえもん…出来杉ての家のチャイムのボタンを押したら感電した…もうダメかと思った…」
「…生きててよかったな」
「うん」
「そんな感電死を逃れる事が出来たのびよしにこんな話なんだけど、ポンくんのさつま揚げ届けに裏山に行かない?」
のびよしはそんな気分にはなれなかった。寝たい。さっきまで昼寝をしていたけれど…。
「やめとく」
しかし現実は簡単なものではない。気がついたらのびよしは玄関の前に、というか走り出していた。
「こういう時漫画では空を自由に飛んだり、ドアを開けたらどこにでも行けたりするのに」
すばやくたぬえもんが反応する。振り向き速度は0.5秒/振り向き(平均値)、たぬえもん1話比80%速度上昇(当社比)。
「何言ってんの。ここは漫画の世界じゃないんだし。小説の世界だよ?」
「どっちも変わらないって!」
(だが…のびよしの部屋のドアって某漫画に出てくるドアじゃなかったか?)
そんな会話があったりなかったりして(たぬえもん:ないんすか?!)2人は裏山にたどり着いた。
静かな風に木は揺れる。なにか違う空気を感じた。
「んで、そのポンくんの家はどこなの?」
「そういえば、聞くの忘れてた」
「(!?)…じゃあどうやって届けるの?」
その時携帯電話の着信音が響く。着信音はのびよしの寝起き、伸びをする音だろう。『ん~、今日もいい天気だな…二度寝しよ…』
「はいもしもし、あっポンくん?うんうん、はい」
(たぬえもん、いつの間に携帯電話を…)
「じゃあね~」
「たぬえもん、道順って聞いた?」
たぬえもんの顔が青白く染まる。もしや…。
「ごめん、聞き忘れた!もう一度電話かけてみる…あっ」
「?!」
「電池切れてる…」
森の中の一本道、アーケードをつくる木が身を揺さぶる。2人の悲鳴。
「帰ろうか…ちょっと暗くなってきたし」
「うん…でもたぬえもん、道覚えてる?」
「……」
電話しながら森の中を進んだから、たぬえもんだって道を覚えていないはずだ。
気付いたときの絶望は言葉にできない。とても酷かった。
結局二人の間で話し合った結果、そのまま進む事になった。
薄暗い道の中、のびよしとたぬえもんが歩く姿はまるでホラー映画のポスターのようだった。
『迷い』5月3日全国ロードショー あなたは森の中さまよった事はあるか――。
そんなことを今乃滝は考えながら筆を進めると、たぬえもん達は不気味だが人気のある洞穴の前にたどり着いた。
「…あの洞穴、ポンくんの家じゃない?」
不気味な洞穴をのびよしは指差す。
「そうかもな。なにかいるような気がする」
「えっ…そうかもなってことは道順はともかく家も知らないの?!」
「そうだけど。だが何かいる事は間違いないさ」
さらにのびよしは不安になる。
「でもその…なにか、なにかが怪物だったら?」
「そんな事言うなって。こんな小さな森の中に怪物がいるはずないさ、動物もほとんどいないのに。怪物はたくさん物を食べなくちゃ生きていけないんだ」
俯いていた顔を上げて、のびよしは唾を呑み込んだ。
「そうだよね。だってこれはコメディ小説だもんね。バトル物じゃないもんね。」
「そうだよ、困ったときは筆者がなんとかしてくれる」
「わかった。じゃあ僕は洞穴を見に行ってくるよ」
たぬえもんはのびよしの姿を見守るようにじっと見つめた。
しばらくの沈黙。
「怪物だぁぁぁ!!!」
その声が響き渡ったのはその数秒後の事だった。
(いた…こんな森の中に…)
のびよしの目の前に姿を現したのはのびよしが今までに見た事がないほどとてつもなく恐ろしい怪物だった。
恐ろしさと怖さのあまり動けなくなったのびよしの頬をかすめるようにその怪物は走り抜けた。
このままではどうする事も出来ない。怪物は遊んでいるように笑った。
考え込むうちに怪物は行ったり来たり。のびよしは足下の石を拾い怪物をめがけて投げつけ、見事当たらせた。
が、怪物はびくともしない。鳴き声一つあげなかった。
(どうすれば…いいんだ…?)
強度が強そうな枝を怪物の体に食い込ませようとしても固く何もならなかった。
ではこれではどうかと足下の大きな石を枝にくくり付けハンマーの要領で背中に当てる。
少し鳴いただけでやはり痛くはない様だ。
怪物は素早く動き、のびよしに向かって突進する。
怪物の頭はのびよしの腹にあたった後、のびよしは後ろにそのまま頭から転び、地面を滑る。
(これじゃあ、倒せることは愚か自分の身が危ない…)
起き上がると、やけになってあちこちを叩いた。肩、腕…。
のびよしの精神力が底をつきそうになった。
(これで、もう最後かもしれない。終わったら…もし駄目だったら…僕は…)
最後の力を振り絞り、腹を叩いた所で怪物は大きなうめき声を上げ、不意をつく事が出来たのか倒れ込んだ。
「ウウゥゥゥウゥウゥゥゥ…。」
やった…僕は…。のびよしは横に倒れ込むと同時に怪物から一本の光の糸が空へ向かう。
ゆっくりと光となる怪物を半目ののびよしは見つめた。
「やったよ、こいつはたった一人で、あの怪物を。」
つぶやきの後に光の糸の先から何かが落ちてきた。
「たぬえもんさ~ん!!たぬえもんさ~ん!!ここは危険です!怪物が!」
「あっ、えるさー、久しぶり。長い事会ってなかったな。」
「そんな悠長なことを言っている場合じゃないですよ!怪物が昨日天空の神殿から逃げ出したんです!!」
えるさーは必死の様だ。ピョンピョン飛び跳ねる事でそのことを表現している…と思う。
「怪物って?というかなんでここに来ている事が分かるの?」
「天空の神殿の混沌の統治獣が狂ってここにやってきたと神官が言っていたからです!!それよりここ危険です!早くここから…」
たぬえもんは右頬を掻いた後、光へと変わって行く怪物を指差す。
「混沌の統治獣ってこれのこと?」
えるさーはびっくりしていつもより激しく飛んだ。
「ギィヤ~~~!!!そう…!!それです!早く逃げましょう!」
「…その心配はないみたいだぞ」
えるさーは首を傾げた後に、のびよしの寝込む姿を目に入れた。
「のびよしさん、のび…」
たぬえもんは人差し指を唇に当てる。えるさーは悲しみに打ちひしがれたかのようにその場に倒れ込んだ。
「もう少し早ければ、のびよしさんを助ける事が出来たかもしれないのに…僕は…」
「その反対だよ、のびよしは倒したんだ、あいつを。光へとかわる統治獣を…」
たぬえもんは闇に染まる空を見上げながら指差し、えるさーはたぬえもんの指差す先を見つめた。
その翌日。
「とは言っても…」
えるさーは自宅でさつま揚げを片手に紅茶をすすった。
「たぬえもんさんが混沌の統治獣に関わる記憶を消してほしいって言っていたけれど、ちゃんと成功したかな…僕は魔法下手だし」
たぬえもん以外は統治獣のことだけではなく昨日のこと全て記憶があやふやになっている事は知らない。
「美味しい。たぬえもんさんのさつま揚げ…今度また頼んでみよう!でもさつま揚げは紅茶には合わないな…」
「二人とも起きなさい!引っ越しのトラックが来てるわよ~。早く乗り込みなさい!」
「は~い」
(昨日はすっごく疲れた事は覚えているんだけど…何があったっけ)
1階へくだる階段でのびよしはたぬえもんに呼びかけた。
「たぬえもん、昨日何があったっけ?」
「え?昨日は…君は感電死を逃れられたよ」
のびよしは、そこまでは覚えているけれど、そこからは…という表情でたぬえもんを見つめた。
「他に何があったっけ?」
たぬえもんはしばらく考え込むと、付け加えた。
「ポンくんに無事さつま揚げを届けてすんなりと帰ってきたじゃん」
「そだっけ?」
玄関の前のトラックは光っているのかよどんでいるのかよくわからなかった。
でも、このトラックが新しい町へと長い道を運ぶ事は分かっていた。
「ほらトラックが来てるよ、乗り込まないと」
「うん、そうだね」
そんな会話を交わした後、のびよしとたぬえもんはトラックの荷台に乗り込み家具たちと一緒に長い旅――新しい町へと出かけました。
さようなら、長い間住んだ町。楽しかった思いでがたくさん詰まっている町を僕は離れなければならない。
またね。
「あれ?今日って四月一日?」
fin.
―――あとがき~この小説を最後まで読んでいただいたあなたへ~―――
長くも短かったたぬえもん4話いかがだったでしょうか。
ずいぶん前からこの話を練っていました。ぐだぐだと…。
『引っ越し』というのははじめから変わっていませんが最初はたぬえもんとのびよしが森に狩りに出かける、というストーリーでした。
しかし、なかなか話進まず結果的にこうなりました。いまいちですね~。
なかなか3話を超える話はなかなか出来ず…。みなさんの期待を裏切ってしまいました…。
たぬえもんたちは引っ越しをするので、これでたぬえもん(第一シリーズ)は終了です。もしかしたら第二シリーズを書かないかもしれません。
今日四葉さくらさんと会って、「たぬえもん終わるよ!」と言ったら、続けてほしいと言われ、
ファンタスティック・マジック F7が終わったらたぬえもん5話を書く、という話に落ち着きました。
F7が完成したら、たぬえもん5話も楽しみに(…?)していてくださいね♪
というか大長編の最後にのびよしはえるさーから手紙を貰っていたんですけれど、なんて書いてあってんでしょうね…。考えてないです(おい)
さて、短い&ぐだぐだですがここであとがきを終わらせていただきます。
今乃滝